筆者は以前、1回に数十万人に配信するような規模のメールマガジンンの編集をしたことがあります。
そのなかで様々なクレームをいただいた経験から、メールマガジンという<「相手の懐に個別に飛び込む」形だからこそ少し気を付けておきたいこと>をお伝えします。
テレビであれば本人が見る・見ないを選べますが、メールは相手にとっては不意に手元に来るので、話題を出すタイミングとして最悪の状況に相手がいるかもしれない、ということを想定することが必要です。
必ずしもどの業種・どの配信層にも当てはまるわけではありませんが、例として挙げたいと思います。
1.お正月だからと言っておめでたいとは限らない
お正月だとつい、「あけましておめでとうございます」と言ってしまいそうですが、お祝いの表現は避けるようにしていました。
喪中の方もいらっしゃいますし、大切な方をなくして落ち込んでいる真っ只中の方に配信するかもしれないという配慮をもって原稿を作りましょう。
「今年もどうぞよろしくお願いします」等、別の表現で新年のあいさつは代替できます。
2.アレルギーに配慮を
2月には節分の話をすることがあるかもしれませんが、「ピーナツを撒く地域もあるようです」とメルマガで紹介したところ、「ピーナツはアレルギーを持っている子どもには非常に危険です!その注釈を載せずにただ紹介するとは何事ですか」というご指摘をいただいたことがありました。
ある地域で実際に長年行われているような風習でも、一部の人には命にかかわることになることもあるので、食べ物関係の話をするときはどのようなアレルギーがあるのか調べてから発信するか、面倒なら触れないようにするのが良いかもしれません。
3.卒業おめでとうにも反応が
3月だと卒業シーズンですが、卒業される方はご卒業おめでとうございます、という表現に対して「うちの子は留年です。不快です」「浪人生なので卒業とか関係ありません」と言われるケースもあります。
「おめでとう」の裏で、おめでたくない人もいるかもしれないことに配慮しましょう。
以下はシーズンに限らず注意したいことです。
4.「天気」は地方による
無難な話題として「いい天気で気持ちがいいですね」も、相手の住んでいる地域によっては違うかもしれません。
自分のいる場所だけでなく、全国の天候を確認したうえで話をするか、「編集部のある△△地方では…」のように、自分と相手の住む場所は異なるかもしれない前提の話をするのが無難です。
少し余談ですが「雨が続いてうっとおしいですね」「湿気が高くてジメジメしますね」といったネガティブなあいさつ文は、誰もハッピーになりません。「湿気が高いと肌が潤う気がしませんか?」のようなポジティブ表現にできないか、検討してみましょう。
5.旅行、買い物、グルメの話はやっかみを買う可能性
**に行きました、(楽しみとして)●●を買いました、おいしい△△を食べました、のように「楽しみ」のためにお金を使ったという話を書くと、「うちにはそんな余裕はない」「うちが消費者としてお宅のサービスに払ったお金がそんなところに消えてるんですね」などの反応があるため、自分の楽しみにまつわる消費の話は封印するようにしていました。
逆に、節約のために高い野菜を買わないようにしている…と言うと、農家の方から「野菜を買わないことを薦めないで!」という反応、「家電を買い控えています」というと家電メーカーの人が「不景気になる!」という反応をひきおこすケースもあります。
5.「子どもが元気で大変です」も注意
子どもの話題は無難と思いきや、「不妊症で苦しんでいる私に嫌味ですか」「うちの子は生まれつき障がいがあるのです」「先月流産したところなんです。無神経ですね」などのクレームが来る可能性があります。あらかじめ育児や教育の話題を提供しますよ、という前提で了承して登録してもらっているのではない限りは、子どもの話題も避けたほうがよいでしょう。
今や7組に1組が不妊の時代と言われているので、決してマイナーな問題ではないことに気を付けましょう。
6.家族関係のノロケめいた愚痴も危ない
夫や妻が~、姑が~といったドタバタをコミカルに話す…という事に対しても「私は結婚すらできていないのよ!」と怒る読者もいます。
男性の生涯未婚率が25%、女性も18%と言われていますので、こちらもマイナーな問題ではありません。
世知辛いばかりですが、気が立っているかもしれない読者のもとに切り込んでいくわけですから、激しいクレームをもらって消耗するよりは最初から危ない橋は避けたほうが良いでしょう。
7.母の日が~、父の日が…も危ない
これも筆者が実際に受け取ったクレームのなかで印象深いものですが、子どもや夫の話ができないのであれば、母の事を話そうと母の日に母親にプレゼントをした話をしたら「私は幼いころに母を亡くしました」「母をつい先日失ったばかりの身にはつらいです」といったクレームがありました。
申し訳ないとしか言いようがなく、どう返していいのやら非常に返信に悩んだ記憶があります。
8.特定の企業、商品の話題は避ける
ほめるにしろけなすにしろ、特定の企業、商品の話題は避けたほうが無難です。
その商品を売る事業なら別ですが、たとえばA社の事をほめると「わたしは競合のB社で働いています。A社にクローズアップするならB社も取り上げないと不公平です」と言われたり、世の中で話題になっている不祥事の事を取り上げても「私の夫がその会社で働いています。一生懸命やってるのにさらに鞭打つのですか」などのクレームが来る可能性があります。
9.配信日・配信時間にも注意を
配信曜日や時間によってメールの開封率は異なるものですが、配信タイミイングへの配慮は忘れないようにしましょう。
たとえば原爆投下(8月6日、9日)、終戦日(8月15日)、大災害のあった日(3月11日)など、黙祷を捧げるような日やその時間帯にメールを送信してしまうと、「常識を疑います!」といったクレームが来ることがあります。
なお本州の人にはあまり認知されていませんが、沖縄では6月23日が慰霊の日です。
配信側からすると通常と同じ曜日・時間の予約配信の延長でうっかりしてしまうことがありますが、上記のような場合はせめて黙祷の時間帯は避けるのが無難だと思います。
年間スケジュールを立てる時に、配慮が必要な配信日がないかチェックするとよいでしょう。
また、深夜・未明など、寝静まっていると思われる時間帯にメールを送るのも避けましょう。
携帯電話でメール受信している場合、非常識だ!とお怒りが来てしまいます。
上記の観点は企業アカウントでのSNS発信に通じるものもあります。
なかには「ちょっと過敏では…」と感じるものもあるかもしれませんが、顧客の状況に心を寄せて、クレーム対応にかかる時間と天秤にかけて判断・運用するようにしましょう。