GitHubが、AI駆動開発の「仕様」を作ってくれる『Spec Kit』を公開

GitHubは2025年9月2日、『Spec Kit』をオープンソースで公開しました。このプロダクトは「Spec-driven development with AI（AIによる仕様駆動開発）」という開発スタイルを実現するもので、AI駆動開発向けの「仕様」を生成するためのツールキットです。

ユニークなのが、これが「GitHub Copilot」の一部として提供されるのではなく、「Claude Code」や「Gemini CLI」など他社のコーディングエージェントとも協業が可能な点です。つまり、GitHub製の独立して動作するツールキットとなります。

仕様駆動開発とは

仕様駆動開発は、近年の生成AIを利用した開発手法の1つで「仕様書を明確にすることで、AIによる開発時の暴走を防ぐことができる」というものです。AWSが公開している開発エディタ、「Kiro」などでも同じような思想で開発されています。

仕様駆動開発を使った開発フロー

Spec Kitを使った仕様駆動開発ワークフローは4段階で構成されています。

1. Specify（仕様作成）

まずプロジェクトの「なにができるのか」や「なぜ必要なのか」を記述し、コーディングエージェントにより詳細な仕様を生成します。

「誰が使うのか」「そのユーザーが抱える問題は何か」「ユーザーはどのように操作するのか」「成功とみなす基準は何か」といった問いに答えることで、エージェントはその更新を基に後続の生成物を計画することができます。

2. Plan（計画作成）

次に技術的な方向性や制約を提供し、コーディングエージェントが実装計画を生成します。ここでは企業で標準化された技術や、レガシーシステムとの統合要件、コンプライアンスやパフォーマンスの目標など、実運用を左右する条件を明確にする必要があります。

複数の計画比較することも可能であり、内部ドキュメントや設計パターンをエージェントに与えれば、それらを計画に組み込ませることができます。エージェントはこうした制約を理解した上で、後続のタスク分解や実装指示を生成します。

3. Tasks（タスク分解）

仕様と計画を元に、エージェントがレビュー可能な小さなタスクへと分解します。各タスクは独立して実装・テスト可能な単位とし、エージェントはこれらのタスクを順次（あるいは並列で）実装できるようにします。

4. Implement（実装と検証）

エージェントがタスクを実装し、開発者はタスクごとに生成物を検証して次へ進めます。各段階には明確なチェックポイントがあり、開発者は仕様や計画を更新して再生成をおこなってもよいとされています。

使用方法

プロジェクトを作りたいディレクトリにおいて、uvxを利用してspecifyを実行し、プロジェクトを初期化します。

uvx --from git+https://github.com/github/spec-kit.git specify init <PROJECT_NAME>

利用したいコーディングエージェントを選ぶと、以下のようなファイルが配置されます（GitHub Copilotを選択した場合）。

.github/prompts/tasks.prompt.md
.github/prompts/specify.prompt.md
.github/prompts/plan.prompt.md
memory/constitution_update_checklist.md
memory/constitution.md
scripts/update-agent-context.sh
scripts/setup-plan.sh
scripts/get-feature-paths.sh
scripts/create-new-feature.sh
scripts/common.sh
scripts/check-task-prerequisites.sh
templates/tasks-template.md
templates/spec-template.md
templates/plan-template.md
templates/agent-file-template.md

今後の展望

現時点においてSpec Kitは仕様駆動開発のための実験プロジェクトであり、ブログやリポジトリでは今後の改善点として、より緊密なVS Code統合の検討、複数実装の比較機能、およびスケール時の課題に関する利用者からのフィードバックを募っています。

AIを活用した開発手法の進化を示す興味深い取り組みとして、今後の発展が注目されます。