「SNSの運用が社内で軌道に乗らない…」ととある製造業の企業の方にご相談をいただきました。
社内でのSNSへの期待が低く、あまり機運が高まっていないとのことで、ネット戦略を軽視している人が多い…と残念がっておられました。
おもしろがって動いてくれない組織には、根拠のある数字で説得する
同じ組織にいても、人それぞれ、興味の範囲や、業務範囲で優先すべきものとアサインされているものが異なります。そのため、前例のないことをやろうとすると拒否反応が出てくることも。
周りを巻き込むことが難しい場合は、まずはひとりであってもいいので人件費を圧迫しない規模ではじめてみて、それを数字で確認し、やれる範囲で改善をして振り返りをしてみましょう。
その数字を見て、「これだけの規模のパワーをかけてこれだけのリターンがあるので、もう少し人をアサインしてくれればさらに大きなリターンがあることが見込める」ということを説得できるようにするのです。
もちろん、そこで得られるリターンが、他の施策より小さかったり、他の施策で得られるものなのであれば、潔く引き下がることも大切です。
SNSは万能ではない
世の中に出ているSNSの成功事例は、「無料のSNSツールで拡散されまくって何万人にリーチした!」などの景気のいい話が取り上げられているため、つい担当者の期待も大きくなりがちですが成功するのは、たゆまぬ努力をし続けたうちのほんの一握りです。
自社でお客さんになってほしい人が、SNSを全然使わない、とかこの用途では使わない…ということもあり得ます。そこは、お客さんになってほしい人たちにまずは10人程度ヒアリングをするなどして、利用しているSNSは何で、何に使っているのかを聞いてみるようにしましょう。
例えばInstagramは、ビジュアル重視のSNSなので、アパレルやファッション、グルメ、アート系の事業などと相性が良いですが、よくいうとコツコツ型、悪く言うと「写真映えしない」事業の場合は不向きです。そこに運用のパワーを充てるなら、他のことに充てたほうがリターンが大きいでしょう。
案外、商品同梱のチラシが最強…だったりすることも多々あります。
どうやってSNS運用の効果を判断するか
まずはWebサイトの目標をきちんと定義し、組織内で共有をします。
*詳しくは「Webサイトの何を改善すればいいかわからないならGoogle Analyticsの「目標」と「ページの価値」設定!」をご覧ください。
Webサイト上で購入できるサービスの場合は「購入完了」、購入できないサービスの場合は「資料請求完了」や「お問い合わせ完了」といった、事業の数字に影響するユーザーのアクションを組織内で定義するということです。
まず最初にそのアクション完了を「目標」として、「ページの価値」をGoogle Analyticsで計測できるように設定します。
何経由でWebサイトに来訪した人が有望なのかがわかるようになる
Google Analyticsで「目標」と「ページの価値」を設定すれば、あとは簡単です。
Google Analyticsの管理画面で、「集客」の「サマリー」を選びます。
すると、「Organic」(検索エンジン経由)、「Referral」(別のWebサイト経由)、「Social」(ソーシャルメディア経由)、「Direct」(お気に入り経由または、直接URLを入力して)、「Paid Search」(広告経由)、「Email」(メール経由)など、何経由での来訪かが円グラフで表示されます。
上記の例のケースは「Social」(ソーシャルメディア経由)は3番目に多い来訪経路ということがわかります。
しかし、事業において「認知されたい・リマインドしたい」というケースは、来訪が多いことである程度(※)評価できますが、「オンラインでものを買ってもらいたい、問い合わせを受けたい」と思っている場合は、来訪の割合で評価するのは早計です。
(※)「ソーシャル」の内訳をみると、スパム広告が混入している場合もあるので、「Social」が増えていることだけで評価はできません。
必ず内訳を確認するようにしましょう。
内訳の確認方法は、そのまま下にスクロールすることで、経路ごとのセッション、滞在時間、コンバージョンが確認できます。
これを見ると上の例では実はソーシャル経由でのコンバージョンは0%に過ぎず、じつは「Referral」経由が最もコンバージョンを生んでいる、「有望な経路」であることがわかります。
そしてそのまま棒グラフの部分の「Social」をクリックすると、それぞれどのソーシャルメディアからの参照であるかの内訳の数字も確認できます。
ソーシャルメディアごとのコンバージョンも計測できるので、どれが効いているのかが一目瞭然というわけです。
ここで(※)でお伝えした、スパム広告が混入していないかも確認できます。FacebookやTwitterなどの有名どころでないものが混じっている場合は、「サイト名+analytics+スパム」などで検索して、スパムでないかを確認するとよいでしょう。
小さく始めて、トライ、振り返り、改善を繰り返す
現状の数字が芳しくない場合は、大きなパワーを割くのではなく、ユーザーのヒアリングをするなどして小さく改善を積み重ねていきましょう。
FacebookやTwitterのどんな投稿が「いいね」やシェアをよくされたのか、内容やタイミング(曜日や時間、または時事ネタに合わせて?など)、記事の書き出しや画像を振り返り、「どこがよかったのか」を仮説を持って次回の投稿でトライしていきます。
それでも数字が良くない場合は、担当者を変更するか、思い切って別の仕事にパワーを割いたほうが良いかもしれません。
いずれにせよ、貴重な限られた時間をただ投稿を繰り返す事に費やすのではなく、「振り返って仮説形成してトライする」というサイクルを組み込むことが大切です。
これはリスティングやブログ記事などの運用でも同様の考えが応用できるので、ぜひGoogle Analyticsを有効に使って改善策の検討や、パワーの置き所の判断に役立ててください。
細々とでもSNSをやっていたほうがいいケースとは?
効果があまり出ていなくても、どうしてもSNSを続けたい場合の上司の説得材料としては
「有事の際などに、緊急時の告知ができる」というものがあります。
災害などで出社が困難、かつ職場でしかサイトを更新できない場合、またあまりないとはいえサーバーが落ちてしまうなどで企業・団体からの連絡を公式Webサイトに発信することが困難でも、SNSであればIDとパスワードがあれば緊急告知ができます。
緊急の告知ツールとして残しておきたい、というケースもあります。
本来的にはターゲット層が利用するSNSを効果的に運用できるのが一番ですが、今回の記事を参考に、社内・団体内で許されるパワーで無理なく運用するようにしましょう。