中小企業や団体で「お問い合わせメール」に返信する担当が一人だけ、ということは珍しくありません。ただ、担当者が休んだ時にお問い合わせ対応がストップしてしまうのが困りもの。それを避けるために複数の担当でお問い合わせメールの対応を担当しているところも多いでしょう。
メリットとしては
・ある担当が休んでも、別の誰かが新しいお問い合わせに対応できる
ということが挙げられますが、デメリットもあります。
・「みんなで担当」することにより、多忙時には「誰ががやってくれるだろう」と放置されがち
・返信担当を曜日などで持ち回りにしても、その担当が多忙だったり返信経験が少ないと、処理できるお問い合わせ件数が増えず、結局他の担当が手伝わざるを得ない
・来たメールは共有できるが、誰がどう返信したのか見えづらい
といったことです。
対応策を順に考えていきましょう。
1.お問い合わせを減らすための工夫をする
まず仕事を減らすための仕事として「問い合わせを減らすための工夫」に着手しましょう。
問い合わせ内容を振り返り、よく質問されるものを洗い出します。
問い合わせをきっかけに成約につながるようなものはそのままにしてもいいかもしれませんが、ただひたすら人件費を削っていくだけのような質問については、その質問が来ないような工夫を凝らします。
【お問い合わせを減らすための工夫】
・サービスや商品に不具合がある場合はその不具合を正す
・サービスや商品にFAQや使い方の案内を同封する
・サービスや商品の説明ページの解説を改善したり、FAQを記載する
・お問い合わせフォームの直前にFAQ(よくある質問と回答)を必ず経由するようにする
・お問い合わせをメールで受け付けていて、対応に必要な情報が足りずにやり取りが発生している場合は、一度の連絡で必要な情報がすべてもらえるようなフォームを実装する
2.お問い合わせの対応時間を減らし内容を均質化する「回答テンプレート」を作成
よくある質問を洗い出す際には、その回答案もセットで洗い出しをしましょう。
担当により回答に偏りがある場合はこれを機に、「回答テンプレート」を作成します。
その際、質問をカテゴリ分けしておくと新人でも検索し、回答しやすくなります。
模範の回答は企業・団体内の担当であれば誰でも見られる場所に格納しておき、コピー・貼り付けで対応できるようにしておくとよいでしょう。
可変の部分は【★お客様の名前★】様 などと、必ず変更すべきとわかるようにして「コピー・貼り付けのまま送付してしまう」という事故を回避するようにします。
新たな商品やサービスをリリースするときには、その回答テンプレートデータに回答案を追記するルールにしておくと、社内連携もスムーズです。
たくさんありすぎて手が付けられない…という場合も、1週間に1本ずつでもよいので作成していきましょう。千里の道も一歩から、少しずつ貯めていくことで必ず仕事が楽になります。
1,2ができれば、ある程度のお問い合わせ対応の外注も可能です。
3.「誰が返信するか問題」の決着のつけ方例
案1)「振り分け担当」を当番制にする
お問い合わせの内容に目を通し、振り分けする担当を当番制にするパターンです。
その当番は「前回当番」が対応した次のお問い合わせメールからすべてのメールに目を通し、「定型文で回答可能」なものと、「対応不可能」なものに振り分けます。
「定型文では対応不可能なお問い合わせ」を社内関係者で共有し、スキル的または業務量的に最も早く回答案が作れる人が作成し、当番に連絡します。
当番はその回答内容を、「回答事例集」に掲載します。
メリット:
全員で「当番」を担当することで、全員の知識の底上げや共有ができる。
懸念事項:
1)仕事が早い人、スキルが高い人ほど、「定型文では対応不可能なお問い合わせ」を作成する回数が増えて不満が出てくる可能性があります。それを回避するには、回答を執筆した回数を評価の対象にする、ねぎらいの機会を設けるなどして回答執筆が多いメンバーのモチベーションを保つ必要があるでしょう。
2)仕事がテンパっている人ほど、「定型文では対応不可能なお問い合わせ」のメールチェックをする時間がないことが多く、状況についていけないこともあります。
そういうメンバーが懸念される場合は「定型文では対応不可能なお問い合わせ」を社内関係者で共有する際は、朝会や夕会など、対面やオンライン会議で共有するという工夫も必要です。
案2)お問い合わせ対応をする時間を決め、その場にいるお問い合わせ対応可能なメンバー全員で手分けする
出社直後、退社前などの●分は1日1回または2回、必ずお問い合わせ対応をする時間ととして時間を確保するパターンです。
前回の対応時から今回の対応時までに来たお問い合わせについて、その場で対応可能なメンバーで割り振りをします。
メリット
・仕事に慣れていないメンバーでも様々な事例にキャッチアップできる
懸念事項
・お問い合わせが少ない時が続くと、「お問い合わせ対応時間」に会議を入れて有名無実化してしまいがちなので、不可侵の時間として確保する必要がある
・平等な割り振りの結果、仕事に慣れていないメンバーの残業時間がさらに増える傾向にある
※シフト勤務や常勤でないスタッフが多い場合は向かないので、この方法は使わないほうが良いでしょう。
<お問い合わせメールの処理にオススメのツール>
予算ゼロ・スキルゼロの場合はアカウントの共有でしのぐ
お問い合わせを受けるメールアドレスのアカウントを関係者で共有します。
そのお問い合わせのアカウントに来たメールは、関係者に転送される設定にしておきます。
予算ゼロ・スキルのアテがあるNPOの場合はSalesforceの無料プラン
お問い合わせ対応だけに使うにはかなりもったいないですが、10人以下のアカウントでNPOでの利用であればSalesforceの非営利組織向けの無料プランが利用できます。
見込み顧客へのマーケティングなどを力強くサポートするツールですが、実装は自力でする必要があります。
Salasforceの非営利団体への製品寄贈・割引
https://www.salesforce.com/jp/company/foundation/product.jsp
予算が多少あるNPOの場合はサイボウズのメールワイズ
複数の担当者で問い合わせメールを共有でき、担当者や対応状況を共有できるツールです。
NPOプランの適用があります。50ユーザー・年額1万円(税抜)
サイボウズ NPOプログラム
https://npo.cybozu.co.jp/
その他、「お問い合わせ」「ツール」で検索すると様々なツールがあります。無料のものや、無料トライアル期間が設けられたツールもあるので、自社・自団体に合ったものを選びましょう。